死の心理経過

「死の瞬間」の著者キュブラー・ロス女史は、死を告知された患者は、どのような心理的変容をたどって死を迎えるかということについて、一つの臨床的研究を行い、患者の死に対する考え方と死の恐怖をどのようにして和らげるかという問題について、具体的に考える手掛りを提供しました。

死を迎えるまでに人間の心理はさまざまな様相をたどります。死は人にとってもっとも個人的、内面的な出来事であるからです。したがって、キュブラー・ロスが症例研究から概念化した「死の過程」も、どのような死にも当てはまるというものではないでしょう。しかしながら、彼女が示唆した一連の逐次的な5つの段階は、死の過程に一つの輪郭を与えたものと考えられます。

死の段階は、キュブラー・ロスが200人の死に臨んだ患者と面接し、そこから選んだ死の経過を記述したものです。

キュブラー・ロスの死の段階モデル

第1段階「否認と隔離」

私にはそんなことはあり得ない」といい、死を認めようとしません。死を遠ざけようとする段階です。否認は、一時的な自己防衛機制によって生じます。やがて徐々に死を受容し始めます。

第2段階「怒り」

死の否認という段階が維持できなくなると、やがて死ななければならないことに対する怒り、さらに生き統ける健康な人々ヘの羨望、恨みなどのさまざまな気持ちが現れます。

第3段階「取引き」

この段階は「交換条件」のようなものであって、神仏や超自然な力に対して何らかのお願いをして約束を結びます。たとえば、「病気が治るならば、自分の財産を寄付してもよい」などと…もし、それが出来ないならば、せめて痛みや身体的不快のない状態がほしいと願うのです。

第4段階

「抑うつ」末期の人はたび重なる手術あるいは入院治療を受けなければならなくなり、さらに「取り引き」にかかわらず、ますます病いが悪化する兆候が現れはじめて、衰弱も加わってきますと、現在までにやり残してきた仕事や、さまざまな後悔などの思いが患者の心に去来し、抑うつ的になります。

第5段階「受容」

受容はこれまで生きることへ向けられていたエネルギーが、それから離れることを意味します。苦痛との戦いが終わり、長い旅路の前の最後の休息の時がこれにあたります。患者が突然死や事故死ではなく、何らかの形で死を予期し、覚悟してきた患者は、このような心理的経過を経て、やがて死を受容して死んでいくといっています。こうした精神的な葛藤を生き抜いてきた人は、それまでより人格的に成長するということがいえるでしょう。

もっとも、こうしたプロセスはあくまで、一つのあり方であって、最後まで死を受け入れないで死んでいく人や、子供たちの将来を安じながら死んでいく人たちも多いことでしょう。